滲出性中耳炎の症状・症例
滲出性中耳炎
比較的弱い毒性の細菌などによって起こる中耳炎で、多くは就学前の幼児に見られます。中耳に滲出液が溜まっている状態で、鼻かぜや急性中耳炎の発症に続いて起こることが多くなっています。細菌による感染に加え耳と鼻をつなぐ管(耳管)の働きが悪い、鼻の通りが悪く、鼻啜りの習慣があると発症しやすくなります。
小児は多少聞こえが悪くとも自ら症状を訴えませんが、急にテレビの音を大きくする・聞き返しが多いなどの症状がある場合は、本疾患の可能性があります。
自然治癒も望めますが、数カ月以上治癒しない場合は、鼓膜に換気チューブを挿入する手術を行うことがあります。
滲出性中耳炎を繰り返す、症状が長引くことで慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎に進展する場合があります。
正常な鼓膜
滲出性中耳炎
症状
- ・難聴
中耳腔にたまった滲出液によって鼓膜の動きが制限され、効率的に音を内耳へ伝えることが出来なくなり、聞こえにくくなります。 - ・耳閉感
中耳腔にたまった滲出液によってトンネルに入ったような、耳がつまっているような耳閉感が現れます。 - ・自声強聴
自分の声が自身の中で響くような症状です。 - ・耳鳴り
ポコポコといった水の音やブーンというような低い耳鳴りを伴うことがあります。 - ・耳のあたりが重い感じ
中耳腔にたまった滲出液によって耳のあたりが重く感じることがあります。
診断
症状やその経過をお聞きし、耳鏡や内視鏡を使って鼓膜の状態を観察します。鼓膜内部の滲出液の有無、発赤などの炎症反応の有無を確認します。鼓膜の状態を調べる検査であるティンパノメトリーでは、鼓膜が正常に動いているかがわかります。また、詳しい聴力検査を行い、難聴の有無や程度を調べます。総合的に判断し診断いたします。
治療
滲出性中耳炎の多くは副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎が原因であるため、以下の耳の治療に加えて鼻の治療も行うことが大切です。
薬物療法
薬物療法では炎症を抑えるための抗生剤、粘液を柔らかくするための粘液調整剤を内服します。
穿刺、鼓膜切開、チューブ留置術
薬物療法で改善が見られない場合は、鼓膜の内側に貯留した粘液を排出するために鼓膜に針で穴をあけたり(穿刺)、切開します(鼓膜切開)。鼓膜の穴はしばらくすると自然にふさがるため繰り返し滲出液がたまる方にはチューブ留置術を行います。チューブ留置術では鼓膜切開をした後の穴に小さなチューブを差し込むことにより換気口を形成します。このチューブも時間とともに自然に脱落し排出されます。
これらの手術は基本的には外来で部分麻酔にて行われますが、お子様など外来での対応が難しい場合には手術室で全身麻酔での手術も可能です。