性別違和・性別不合・GIDの方々へ

自分の性について悩みをお持ちの方の中の多くは、声に関する悩みをお持ちです。声の印象と見た目の性が異なる、電話で間違われてしまう、ご自身の声を聞くことが苦痛に感じるなど、日々の生活で大変つらい思いをしています。

声の高さは声帯が大きく、太く、ボリュームが大きいほど低くなります。また骨格や筋肉量も影響します。意識的に声の高さを変えて話していても、のどの筋肉が緊張し、痛みや苦しい感じを覚えたり、くしゃみや咳で不意に元の声が出て困ることもあります。自分で出し方を工夫したり、リハビリテーションで練習をしても難しい場合は、声を高くする(甲状軟骨形成術Ⅳ型)やウェンドラー声帯短縮術が有効です。

声を高くする手術=音声女性化手術について

音声女性化手術とは、声の高さを一般的な女性の声の周波数に合わせることを目標に、声を高くする手術です。

男女音声の周波数帯

甲状軟骨形成術Ⅳ型とウェンドラー声帯短縮術

声を高くするには、声帯のテンションを高めるか、または声帯の振動する部分を短くするか、が必要になります。声帯のテンションを高める手術法が、輪状甲状軟骨近接術(甲状軟骨形成術Ⅳ型 以下Ⅳ型と表記)と言われる方法で、1970年代に一色信彦先生により考案された方法です。また、声帯を短くするwendler’s glottoplasty(以下、声帯短縮術と表記)は、1990年にWendlerによって発表されております。

弦の長さ、テンションと周波数の関係

両術式とも、全例で平均的な女性の周波数に達するとは限らず、一方の術式で十分高い音声が得られない場合には、もう一方の術式を後に行うことも可能です。

Ⅳ型 術式 声帯短縮術
術中の調節 ×
1~2時間 手術時間 1時間以内
数日 リカバリータイム 数週間
局所麻酔 麻酔 全身麻酔
比較的狭い 音域 比較的広い
安定的 声の音質 悪化する可能性

なお、甲状軟骨形成術Ⅳ型で十分な効果を得られない場合にも、本手術を追加して行うことでより良い効果が得られることもあり、逆に本手術で十分声が高くならないときに甲状軟骨形成術Ⅳ型を追加することも可能です。

特に音声女性化手術を行った後も、歌を歌いたいなどのご希望が強い方は、本術式の方を選択される方が多いです。

術前後の周波数の変化

Ⅳ型と声帯短縮術、それぞれについて手術成績と術前後の周波数の変化について、Ⅳ型の87症例についての術前後の音声の基本周波数をみると、術前平均162Hzから術後240Hzまで上昇しています。

術前、術後の周波数の変化[期間: 2018.1~2022.4 / 症例数: 87 名 3か月以上フォローアップできた方/ 年齢: 37.9±11.5]


ただし、術後半年経過するまでは少しずつ周波数が低くなる傾向があります。

4型術後の音声周波数の変化

本術式は輪状軟骨と甲状軟骨を近接させナイロン糸で固定するのですが、時間の経過とともにそのテンションが少し緩んでくるものと考えられます。手術中にはこの点を踏まえて、ナイロン糸の縫合のテンションを若干過剰に加えて、希望の声の高さよりもやや高めに設定します。

一方、声帯短縮術についての術後成績、術後の周波数の変化について、術前後の周波数の変化については、Ⅳ型とほぼ変わりがありません。

術前後の基本周波数の変化[期間:2022.9~2024.1 / 症例数:14例(IV型の術後6例) / 平均年齢:33.0±8.6歳 / 術後1カ月以上フォローアップできた症例で術前後 の基本周波数を比較]

術後の周波数の経時的変化については、時間の経過とともに周波数が上昇する傾向があります。これは声帯に直接侵襲を加える手術であるため、数カ月の間に術後の炎症や腫脹が徐々に消退し、その結果振動体としての質量が減少し周波数が高く変化するものと考えられます。

基本周波数の経時的変化

手術実績

喉頭形成術 1056件 2011年10月~2023年12月
声帯短縮術 404件 2023年~2024年10月末

メリットとリスク

Ⅳ型

  • 術中に自身で声を確認することができる
  • 術後発声の安静期間が比較的短い
  • 頸部に数センチの傷跡が残る
  • 術後音域は狭まる
  • 甲状軟骨が柔らかすぎて声帯にテンションがかからない、または、輪状甲状間が狭すぎる症例には十分に声が高くならない可能性がある

声帯短縮術

  • 術後音域は広く保たれる
  • 傷跡が残らない
  • 声の質が悪化するリスク
  • 一度施術すると元には戻せない
  • 全身麻酔のリスクが高い場合、直達鏡を入れるのが困難な場合には手術ができない
  • 術中に声の確認はできない
  • 術後およそ1ヶ月は発声禁止

ボイストレーニング

喉頭隆起(のどぼとけ)切除について

数ミリほど喉頭の切除を行い、喉仏の出っ張りを目立ちにくくさせる施術です。ご希望があればウェンドラー声帯短縮術・甲状軟骨形成術と同時に喉頭隆起切除を行うことも可能ですが、ウェンドラー声帯短縮術の場合は頚部に切開創が生じます。術後1週間ほどで抜糸を行い、傷口は治ります。1年から2年ほどで傷跡は目立たなくなる方がほとんどです。

動画

症例1. 男性

性同一性障害/GID(MtF)の症例

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声のお悩みは他の病気とは違い、客観的には支障が少ないようでも、本人様にとって社会生活上の悩みは深刻です。一方で、より身近に声帯の手術を受ける事が出来る時代でもあります。当院医師と相談しつつ、一緒により良い生活を築いていきましょう。
日頃感じるあなたの声に関するご回答を基に、当院から連絡し解決への道のりをご提案させて頂きます。
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